蜃気楼
入り口に立ててあった案内板を見て、私は戸惑いを隠せませんでした。案内板の最上部、その森の顔とも言える大切な位置付け、そこに記されていた文字は

『キノココースター』

なるほど、これなら地図にあった『親子で楽しめる』の下りも納得できます。その他にも親子で楽しめる陶芸教室の貼り紙、泥を模したキャラクターによる『どろんこ遊びって楽しいよ』と言うメッセージなどもありました。これらの催しやアトラクションに子供たちは目を輝かせることでしょう。そして親子はより深い絆で結ばれるでしょう。

いや、しかし何かが足りません。私がここに求めていたものについて全く触れられていないのです。

「あの……」

「いらっしゃい」

近くにいた係員に恐る恐る話し掛けると、満面の笑顔で出迎えてくれました。

「あの、ここってきのこを採ったりとかは……」

見る間に雲ってゆく係員の笑顔。長い沈黙。
そうです、ここはきのこを模したアトラクションが多数存在するきのこテーマパークでした。様々な種類の木々が生い茂り、その下にたくさんのきのこが群生するきのこの楽園ではありませんでした。

「きのこは今の時期あまり生えてないしねえ」

止めまで刺されました。

『夏に生えるきのこだってたくさんあるのに……』

抗議の言葉をぐっと飲み込み、きのこの森を後にしました。
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by isotope0001 | 2005-08-09 12:39


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